ミレニアム ドラゴンタトゥーの女 上 6

 事件はヘーデビー島で起こった。
 島の出入り口は大きな橋が一つ。ヨットハーバーなどもあるが、基本的にはこの橋を通らねば島には出入りできない。ミステリーの定番クローズド・サークルに近い。
 事件のあったと思われるその日、島ではもう一つの事故が起こっていた。橋の上で事故が起こり、その日は通行止めとなっていたのだ。そして気が付くとハリエットがいなくなっていた。
 その後夜通しの捜索にも関わらず、ハリエットは発見できなかった。
 ミカエルは様々な仮説を立ててヘンリックにぶつけるが、それらの可能性はすべて排除された。
 全ては考えつくされ、あらゆる可能性は検討された後だった。当時の捜査資料を読むに、手抜かりはない。
 文字通りハリエット・ヴァンゲルは消えてしまったのだ。

ミレニアム ドラゴンタトゥーの女 上 5

 唖然とするミカエルだったが、結局以来をうけることにする。
 報酬云々もあるし、世間から少し離れたいという思いもあったのだが、何よりも「謎」が魅力的だったのだ。
 人間は未知の何かに対面した時、「闘争」か「逃走」のどちらかの態度を取ると言う。ミステリーとはいわば、「謎」との闘争なのだと思う。
 ハリエット・ヴァンゲル。ある日突然姿を消してしまった少女。
 40年前のその日以来、彼女の姿を見た者はいない。ヘンリックは彼女を探し続けた。が、手がかりすらつかめなかった。
 彼女はきっと殺されてしまったのだろう。ヘンリックは言う。
 なぜそう思うのか? ミカエルが聞く。
 毎年、誕生日になると押し花が届くのだと言う。11月1日。いつもハリエットがヘンリックに押し花をプレゼントしていたその日、卑劣な殺人犯は毎年押し花をプレゼントする。44年間、ほとんど欠かすことなく。
 犯人は一族の中にいる。
 ミカエルは表向きヘンリックの自伝を書くふりをして、この奇妙な押し花事件に挑むことになるのであった。

ミレニアム ドラゴンタトゥーの女 上 4

 ミカエルは突然、ヘンリック・ヴァンゲルなる人間(の代理人)から会いたいと言われる。
 当然、なんでやねん! となるが、ヘンリックなる男は、スウェーデンでも有数の実業家であることと、ちょうど暇だったのでとりあえず会ってみることにした。
 ミカエルはヘンリックからかなり変わった仕事の依頼をされることになる。
 ずばり、40年も前に失踪した兄の孫娘について調査して欲しい。
 そう言われてもミカエルはポカンである。当たり前だ。
 報酬は月20万クローネ、もしも謎を解いてくれたらボーナスとして500万クローネ払うと言う。ちなみに1クローネ20円ほどだそうで。
 ミカエルさらにポカン。
 ヘンリックはしぶるミカエルにさらに追い打ちをかける。
 君がこの謎を解いたあかつきには、君の一番欲しがっているものをあげよう。
 それは、ヴェンネストレムがペテン師である証拠だ!!
 ミカエルぽかーん。
 続く。

ミレニアム ドラゴンタトゥーの女 上 3

 ミカエルが昔を回想していると、突然場面が変わって、ドラガン・アルマンスキーの話になる。ここら辺の見せ方もうまい。誰だそれは? と読者はなる訳だ。
 アルマンスキーは会社経営者で、基本的にはセキュリティ関連の仕事をしている。その中には調査部門があり、そこの仕事をしているのが、もう一人の主人公リスベット・サランデルである。
 リスベット・サランデル。数多いる物語の主人公の中でも、最も魅力的な主人公であると言えるかも知れない。
 彼女はとても孤独な女性である。
 法律的には無能力者とされ、拒食症とみまがうほどやせ細り、ブス、社交性はゼロで、同僚は全員彼女のことが嫌いだ。過去には精神病院にも入れられていた。
 何の魅力もなさそうなこの女性はだが、ミルトンセキュリティー(アルマンスキーの会社)で最も優秀な調査員だ。どういう手段を使うのかわからないが、彼女の前にはどんな秘密も無意味になる。ひとりでCIAやKGB並みの調査能力を持つ凄腕なのだ。
 そんな凄腕の彼女が、どういう訳かミカエルの身辺調査を担当することになる。
 続く

ミレニアム ドラゴンタトゥーの女 上 2

 この本の主人公は二人いると思う。
 一人はジャーナリストのミカエル・ブルムクヴィスト。
 もう一人はリスベット・サランデル。
 物語はこの二人の視点で交互に進んでいく。
 ミカエルはある種のジャーナリストの理想の体現であると思う。
 単身で巨大なコングロマリッドの長であるヴェンネストレムに闘いを挑み、あっさりやられる。
 完全に嵌められたのだ。
 なので、この世界的なベストセラーの主人公は、開始早々刑務所に入れられるはめになる。
 最も、日本やアメリカと違って、スウェーデンでは刑務所に入ることは、そこまで絶望的なことではないようだ。
 日本は逮捕されたら基本終わりである。
 ミカエルにとって重要なことは、彼がエリカという女性と共同で経営している「ミレニアム」の存続は危ういということであった。
 ヴェンネストレムの悪事を暴くはずの記事が、自分に取っての命取りになるのである。投げた手りゅう弾が返ってきてしまった。
 誤報を載せた「ミレニアム」の信用は失墜、名誉棄損で刑務所行き。
 散々である。
 でも、巨大企業に立ち向かって散るジャーナリスト、という設定には何か胸を熱くさせるものがあった。
 日本にはジャーナリストなどいない。ジャーナリズムもない。
 新聞やテレビはひたすら巨大権力に阿ることにしか興味がない。真実などいらない。商品が売れればいい。甘い汁さえ吸えればいい。
 勿論この本の世界にもそう言ったえせジャーナリスト達が沢山いる。
 彼らは悪党を賛美し、お零れにあずかるのである。
 気骨のあるミカエルは刑務所行きが確定する。
 何やら暗い始まり方である。
 続く。

ミレニアム ドラゴンタトゥーの女 上 1

 なんとなく思いついたので、読書日記でもつけようと思う。
 そう思わせるぐらいの破壊力が、この「ミレニアム」という本にはあった。
 まだ三部作全部読んでいないのだが、これからは一冊読む毎に感想を書きたいと思う。
 この本を読もうと思ったきっかけはなんだったか?
 確か故・児玉清さんが絶賛していたのを何かで見て以来、ずっと頭の奥にひっかかっていたような気がする。何万冊も本を読んでいる人が絶賛しているんだから面白いのかも知れないという思いがある一方、有名人が絶賛している本や映画に当たりがなかったり、ベストセラーにあまり面白いと思う本がなかったりすることもあり、結構な期間読まなかった。
 先日ふと、「永遠の0」のあとがきを児玉清さんが書いているのを見かけた(永遠の0は読んでいない)。久しぶりにHEROを見た。そして書店でひときわ目立つ黄色の背表紙に「ミレニアム ドラゴンタトゥーの女」とあったのを見た。
 ドラゴンタトゥーの女。どう考えてもゲテモノだ。ドラゴンと聞くと、ドラクエやらパズドラやらが浮かぶ。つまりファンタジーだ。全世界で売れているファンタジー。ハリーパッターに指輪ナルニア物語。
 そんな系列かと思っていた。全然違った。
 かなり骨太なミステリーだった。
 シャーロック・ホームズのような謎解きは勿論だが、この本の根底に流れているのはジャーナリズムだと思う。
 作者が元々ジャーナリストということもあるのだろうが、この本に流れている血は社会批判であり、社会批判を忘れてしまったジャーナリスト達への批判であるのだと思う。
 疲れたので続く。
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