この本の主人公は二人いると思う。
一人はジャーナリストのミカエル・ブルムクヴィスト。
もう一人はリスベット・サランデル。
物語はこの二人の視点で交互に進んでいく。
ミカエルはある種のジャーナリストの理想の体現であると思う。
単身で巨大なコングロマリッドの長であるヴェンネストレムに闘いを挑み、あっさりやられる。
完全に嵌められたのだ。
なので、この世界的なベストセラーの主人公は、開始早々刑務所に入れられるはめになる。
最も、日本やアメリカと違って、スウェーデンでは刑務所に入ることは、そこまで絶望的なことではないようだ。
日本は逮捕されたら基本終わりである。
ミカエルにとって重要なことは、彼がエリカという女性と共同で経営している「ミレニアム」の存続は危ういということであった。
ヴェンネストレムの悪事を暴くはずの記事が、自分に取っての命取りになるのである。投げた手りゅう弾が返ってきてしまった。
誤報を載せた「ミレニアム」の信用は失墜、名誉棄損で刑務所行き。
散々である。
でも、巨大企業に立ち向かって散るジャーナリスト、という設定には何か胸を熱くさせるものがあった。
日本にはジャーナリストなどいない。ジャーナリズムもない。
新聞やテレビはひたすら巨大権力に阿ることにしか興味がない。真実などいらない。商品が売れればいい。甘い汁さえ吸えればいい。
勿論この本の世界にもそう言ったえせジャーナリスト達が沢山いる。
彼らは悪党を賛美し、お零れにあずかるのである。
気骨のあるミカエルは刑務所行きが確定する。
何やら暗い始まり方である。
続く。