その存在が問題視されながら、次から次へと新たなブラック企業が生まれてきます。
それは一体なぜなのか?
目次
そもそもブラック企業とは何なのか?
「ブラック企業」という言葉が先行してしまって、実態がおざなりになってしまっているような気がしてしまいます。
近年ではブラック企業大賞のような露出の高いイベント(?)のようなものもありますが、これはたまたま目についたものが票を稼いでしまうなどの問題点があります。
参考:ブラック企業大賞
報道されたらブラック企業。
ワタミやゼンショーなど、知名度の高い企業はブラック企業として叩かれやすくなりますが、実際には我々の認知しないブラック企業の方が多いでしょう。
「ブラック企業」という名前は、元々は反社会的な行動をする企業を指す言葉でした。
現在では暴力団が経営するような企業は「フロント企業」という名称が用いられており、「進学校」や「高学歴」などと言った言葉と共に時代の変遷によりその意味が変わった言葉だと言ってよいでしょう。
現在のブラック企業は主に、
- 長時間労働
- サービス残業の強要
- パワーハラスメントやセクシャルハラスメントなどの横行
- 低賃金
- 少ない休暇
- 昇給しない
- 高い離職率
などの要件を満たす企業を言うことが多いと思われます。
日本という国においては、これらの要件を一つも満たさない企業はほとんどないと言えますが、その度を越えてしまった企業を「ブラック企業」と呼んでいるのが現状です。
日本には、過労死する程仕事があるのに自殺する程仕事がない
誰が言ったかはわかりませんが、日本の労働環境を1言で表した名言であると思います。
かく言う私自体も、一日平均20時間ほど労働していた時期があり、過労で倒れてしまった経験があります。
日本には、過労死する程仕事があるのに自殺する程仕事がない
言葉では完全に矛盾しているのですが、これ以上的確な言葉を私は見たことがありません。
このような現状は主に、
少ない労働量で最大限の成果を出そうとする
ことが原因だと言えるでしょう。
バブル崩壊、リーマンショック、中韓の伸長などによる国際競争の激化によって時代は消耗戦に突入してしまいました。
製品を売るためには価格競争に勝つ必要があります。
でも、品質を維持したまま価格だけを抑えるのは限界があります。
そこで企業がとった手段が
人件費の削除
です。
でも、人件費を削除しても全体の仕事量は減りません。
じゃあ、残った奴らを2倍働かせればいいんだ!!
企業経営者達はそう言った結論に達しました。
ブラック企業生成を国が助けている
ブラック企業が生まれてしまう最大の原因だと言えるでしょう。
現在与党の議員の中にその代名詞とも言える人物が名を連ねていることからもお分かりの通り、国がブラック企業生成に手を貸しています。
採用コストの低下がブラック企業増加を加速させる
ブラック企業の最大の特徴の1つに
大量雇用・大量離職
が存在します。
まるで大量生産大量消費のような言葉ですが、ブラック企業の場合は大量に退職者が出る為あらかじめ大量に雇用しておく傾向にあり、かつ年中募集をかけていたりします。
因みに厚生労働省が発表した3年以内離職率の高い業界トップ3は以下の通りです。
「教育、学習支援業」(48.8%)
「宿泊業、飲食サービス業」(48.5%)
「生活関連サービス業、娯楽業」(45.0%)
逆に離職率が低いのは以下の2業種です。
「鉱業、採石業、砂利採取業」(6.1%)
「電気・ガス・熱供給・水道業」(7.4%)
大量募集をする企業に勿論1番問題がありますが、それを可能にしてしまっている機関にも問題があると言えるでしょう。
大量採用が可能になった背景には
① インターネットによる求人
② ハローワークなど採用コストの低い採用チャネルの存在
があります。
富岡製糸場の例を見るまでもなく、昔からブラック企業は存在していました。
当時はその実情が知れ渡ることがなかったことがその存在を支えていましたが、現在は情報網の発展がその原動力になっていると言えます。
インターネットの発達は求人の集中をもたらしました。
日本の学生はその産業体系や社会通念から大手企業への就職を望みます。
その結果、大手企業の中には採用50人応募者30000人などということが起こる一方で、転職サイトへの求人を出せない企業は採用活動が難しいと言った状況を生み出しています。
日本の企業の中で大企業と言われる、もしくは学生の人気が集中する企業は1%未満ですので、大半が大手でない企業に就職することになります。
そう言った中で一部のブラック企業と呼ばれる企業の露出は高く、採用されれば何でもいいという所謂就活疲れをした学生はその実態を知らずに入ってしまうケースが多々ありますし、知っていてもここから解放されたいという思いで入社を決めてしまう学生の数は少なくありません。
インターネット上で露出の少ない優良企業はあるのですが、そういった企業の情報を基本的には学生は知りません。
現在の就職活動は100社200社当たり前の状態になっており、内定の出る学生は一人で10も20も内定をもらう一方、ない内定と言われるように内定が全くもらえず完全に自信喪失してしまう学生が後を絶ちません。
そういった学生を狙って労働力を確保しているのがブラック企業なのです。
とはいえ、新卒以外の中途採用は転職サイトの特性上コストがかさんでしまいます。
*大半の転職サイトでは転職者の年収のx%が転職サイトの取り分になるため。
そこで利用するのがハローワークなど採用コストのかからない機関です。
ハローワークには嘘求人が沢山
ハローワークは勿論、求人情報は嘘ばかりです。
私が以前働いていた会社もトンデモない嘘求人を出していました。
「嘘求人」と言っても、100%の嘘ではない点がポイントです。
大概において求人には「給与例」とか「賞与例」とか記載されている訳で、そこに乗っているのが従業員の中で最も良い待遇の人間の例だったりするわけです。
もしくは理論的に最も良い待遇。
年間休暇や年収などは理論上最高値を載せ、労働時間などは理論上最少を載せる。
あくまで理論上のものを載せます。
恐ろしいことに転職サイトがそういった入れ知恵をするのです。
私が前職を退職した理由の1つでもありますね。
そういった会社は滅んだ方がいい。
けれど、実態と乖離した求人を載せたとしても、現状は何のペナルティもないのです。
労基署なんてただの飾りです
労働基準監督署略して労基署
別段労基署が悪の組織である訳ではないのですが、現状誰もが知っている通り全く役に立っていません。
たまに鬼の首をとったように成果をデカデカと露出しますが、事実上機能していないのは周知の通りです。
労基署が役に立たない理由はいくつもありますが、結局手が回らないのと行政区分の問題が大きいですね。
労基署の社員が対応するには、この国の労働災害は多すぎるのです。
犯罪者が多すぎて対応できない後進国と構図は同じです。
また、労働者に手を貸しても利益はほとんどないので、政治家も官僚もこの問題には関わりません。
彼らはむしろ、東京電力や某遊戯具の会社のようにうまみのある産業や舞台にしか興味がありません。
労基署をはじめとした国や公の機関が、労働者の味方になることなど未来永劫ないことでしょう。
ブラック企業の経営者たちは、見事にそのことを知っているのです。
ブラック企業とそうでない企業の分水嶺
ブラック企業の定義は非常にあいまいです。
以前、東京電力がブラック企業大賞に選ばれましたが、個人的には「は?」としか思えませんでした。
社会的にあくどいことをしたという面では確かに元々の意味の「ブラック企業」かも知れませんが、労働条件的に見たら超絶ホワイトでしょ!!と思ってしまいます。
個人的にブラック企業というのは
・低賃金
・高離職率
・超長時間労働
の要件を満たす職場であると思っています。
ある意味ダブルミーニングになってしまっていますね。
厚生労働省が行った調査によると、国の定めたガイドラインの基準を満たしていない企業は全体の80%以上に上ったそうです。
国が定めている過労死のラインは月260時間労働で、全体の24%が違反しているという調査結果が出ていたようです。
調査しただけかよ!!
結局の所具体的な罰則などがないのが最大の問題点なんですよね。
ただ、月の労働時間が300時間を超えているような会社は少なくはないでしょう。
私自身月400時間程労働をしていた時期がありますし(その後身体は当然おかしくなった)、1日15時間労働というのは珍しくない気がします。
総合商社やマスコミなどはそれに類する程の労働条件にも関わらず、あまりブラックだと言われない傾向にあります。
違いとしてはやはり「賃金」の問題が大きいのだとも言えます。
月300時間労働・月収200万円という労働条件だったらブラック企業の烙印は押されないでしょう。
20から24歳までの給与を見てみると、先ほどの離職率の高い企業であった「宿泊業・飲食業」の平均年収は242万円であるのに対し、離職率の低いインフラ系は362万円と100万円以上の差があります。
参入障壁が高い業界はブラックになりにくい
ブラック企業が多い業種、すなわち低賃金で労働時間が長い業界は参入障壁が低い業界だと言えるでしょう。
私自身が独立したように、教育業界は比較的独立はしやすい=参入障壁が低い業界と言えます。
芸能人の副業が多いように、飲食業は比較的参入障壁が低い業態です。
そのため新規参入者が多く、サービスの質的向上とともにサービスのコストダウンをしなければならず、激しい競争にさらされてしまいます。
一口に飲食業界と言ってもその間口は広く、ラーメン店などは3年で8割が閉店すると言われており、逆にフランス料理店などは閉店しにくいという統計が出ています。
フランス料理は参入障壁が高い為に競走の原理が働きにくくなるのが理由でしょう。
居酒屋などのチェーン店がブラック企業として名が挙がることが多いのは、参入しやすいからだとも言えます。
離職率の低いインフラ系や設備投資や高い技術が必要な業種など参入障壁が高い、事実上新規参入が不可能な業種は比較的離職率が低い傾向にあります。
デフレが更にそれを加速させる
マクドナルドが先日300億を超える大幅な赤字を出して話題になりましたが、デフレが進むと商品価格を定価させざるを得ず、更なる人件費カットと残った社員の長時間労働という結果につながりやすくなります。
安い方へ安い方へと進むため、ワンオペと言われるように最悪店舗に1人しか従業員がいないという事態にもなってしまう訳です。
国外の企業との競争にさらされるかどうかも大きい
シャープや東芝などの大規模製造業者の名が挙げられることも最近では珍しくなくなっています。
近年ではスマホ業界では中国のHUAWEIや台湾のASUSと言った中華系企業に完全に押されていますし、電化製品全体として日本企業は押されています。
技術面というよりも、完全にコスト負けしていると言えるでしょう。
去年発売されたHUAWEI p8liteと4月に発売されるVAIO Phone bizのスペックを比べてみるとその性能とコストパフォーマンスの差に驚かされます。
製造業は今後こういった企業群との競争にさらされ、ますます製品コストを下げねばならなくなるでしょう。
そもそも取り締まる側の労働条件も酷い
先日、取り締まる側になった友人と久しぶりに話をして、ふと先月の残業時間を聞いてみました。
彼の残業時間は200時間にも上ったそうです。
法定の160時間+200時間で360時間も労働時間があった訳です。
公務員も楽じゃないよなぁという以前に、残業代がちゃんと出るあたり流石公務員だよなぁと思ってしまうこと自体が本来は異常なことだと思います。
なにせ私は、残業代などもらったことがありませんからね!!
過労死を英語で言うと何と言うか知っていますか?
ご存じの通り「karoshi」です。
元々「death from overwork」という言葉があったのですが、2002年にオックスフォード英語辞典に正式に登録されたそうです。
フランス語から英語になった言葉には「justice(正義)」などがありますが、日本語から英語になったのは「Tsunami」と「karoshi」です…
日本には「滅私奉公」という言葉があるとおり、己自身を殺しても誰かに仕えることが美徳だと考えられている節があります。
ブラック企業の経営者の多くは、どういう思考回路をしているのか、自分はいいことをしていると思っていますし、彼らはしきりに「雇ってやっているんだ」という腐りきった発言を繰り返します。
国が奴らを罰することはありませんし、必殺仕事人のような「誰か」が鉄槌を下すようなこともありません。
奴らは言葉巧みに「うちで通用しなかったら他でも通用しないよ」などという嘘を平気で付きます。
ブラック企業で働いていると、そこで働いていることがコンプレックスになってしまい、そういった弱みに付け込まれやすくなります。
もっと酷い状態になったらどうしよう。
正社員の地位を捨てたくない。
そういった弱みに付け込むのがとても巧いのです。
1つだけ確かなことがあります。
それは、ブラック企業で働く人間がいる限りブラック企業は生まれ続けるということです。
「石の上にも3年」という諺があります。
3年経ってその無意味さを知ると言う意味の諺です。
ブラック企業で働き続けることで失うものは沢山あります。
これからも失い続けます。
でも、得る物はありません。
ブラック企業で働き続けるということは、ブラック企業に加担していること以外の何物でもないのです。