ファイアーエムブレムトラキア776が発売されたのは1999年、私がまだ中学生だったころの話だ。
そのころはスーパーファミコンが終期に入っていた時期で、ゲーム業界ではプレイステーションとセガサターンの次世代ゲーム機戦争に決着がついていた頃だった。
トラキア776はそんな折にあろうことかスーパーファミコンの、しかもローソンだかでしか書き換えられないカセットでしかできないゲームだったため、やったことのある人間の方が少ないはずだ。
発売から20年近くが経った今、WiiUのヴァーチャルコンーソールにてついにトラキア776をやることができた。
THE・ファイアーエムブレム
トラキアは、今までやったファイアーエムブレムの中で最もファイアーエムブレムっぽかったと思う。
もはや日本語ですらないけれど、強烈な初見殺し、人間関係の深み、コツをつかむと急にスラスラと進むようになり、調子に乗っていると少しのミスで思い入れのあるキャラがあっさり死んでしまう悲しみと自分への苛立たしさ。そういったエグミある作品の完成形トラキア776だと思う。
シリーズの生みの親加賀昭三が最後に関わった作品というのもあるだろうが、他のどの作品よりもファイアーエムブレムだったと思う。
所で、思い返してみれば自分はかつてローソンで書き換えのできるなんとかというカセットを持っていたと思う。
小学生の頃からファイアーエムブレムは好きだったし、なんでトラキア776を購入しなかったのだろうと自分の中で不思議だった。
人間の記憶とはあいまいなもので、時として書き換えられる。
思えば、GBAを持っていたのに封印や烈火、聖魔をやっていなかったし、それ以降のファイアーエムブレムもやっていない。
その原点は今思えばフィンにあった。
フィンに関してはどうしても好きになれない理由がある。
割と多いのじゃないかと思うのだが、フィンが序章でいきなり死んだ。
当時確か小学生だったと思うが、暗黒竜、紋章の謎とクリアしたのち聖戦の系譜をやり、フィンはいきなり死んだ。
序章は斧が多いし、紋章と聖戦ではゲームシステムが大きく変わる。
だからという訳なのか、フィンはいきなり死んだ。
ファイアーエムブレムは人が死ぬゲームである。
ポケモンは敵にやられてもポケモンセンターに行けば回復するし、ドラクエなんて金さえ払えばいくらでも復活させてくれる。ゲームによっては戦闘終了後何事もなかったかのように完全回復していたりする。
が、ファイアーエムブレムはいきなり死ぬ。
正確に言うと死んだ訳ではない。死んだ訳ではないから余計に問題だった。死んでいたらのちによみがえらせることが出来るのだが、フィンはなぜか離脱するのだ。
紋章の謎に離脱の概念はない。
当然、二部の存在なんか知らない。
自分はゲームを買っても説明書は一切読まないタイプだ。
行き詰ったら読む。
だから、フィンが7章だかで再登場した時は震えた。
レベルが1だったかなのだ。
残念ながらまたすぐに死んだ。今度は本当に死んだ。
リーフとナンナは生き延びたが、フィンは死んだ。
フィンなんか弱いし、なんか気に入らないので問題がないと思っていた。
おかげで最終章で詰んだ。
フィンがいないからアルテナが仲間にならなかったのだ。
当時はそんなことに気付かず、アルテナは仲間にならないものだと思っていた。
戦争とは悲しいものだななどと勝手に考えていた。
だから終章でアリオーンと戦う羽目になった。
当然のごとくシアルフィの城には誰もいなかった。
そこでアレスを派遣した。
アレスを派遣した後、連続スリープで主要キャラが眠らされてしまって誰もワープを唱えられなくなった。
アレスなら大丈夫だろうと思っていたらアレスはやられた。
聖戦は自動セーブが基本であるため、その時点で詰んでしまったのだったと思う。
もう20年近く前の記憶だからあいまいだけど、結局聖戦はそのままやらずにクリアしたのは大学生の頃だったように思う。
今ではファイアーエムブレムの最高傑作は聖戦の系譜だと思っているが、あれは小学生に厳しいゲームだ。
杖ゲーであり盗賊ゲーだ
トラキア776の難易度は高い。
仮に何も知らない初見だったらクリアできなかったかも知れない。
だが、今回はやる前に色々と見てしまった。
トラキアをやるか覚醒をやるかで迷ってトラキア776をやったのだが、その過程で色々見てしまった。
とにかく盗賊にネールの書を持たせて盗みまくり、シーフの杖で盗みまくる。
トラキアは他のシリーズとはシステム面がだいぶ異なる。
鹵獲システムとでも言おうか、基本的にアイテムは敵から奪う。
奪うのは基本捕獲なんだけど、結構面倒くさい上に体格の高い敵からはアイテムが奪えない。
そこで盗むが活躍する。
盗むは相手よりも素早さが高くて武器の重さよりも体格が良ければ成功する。
でも、盗賊の体格は基本あまり増えない。
そこで聖戦士の書であるネールの書で体格アップに補正をかける。
これを知っているかどうかで難易度は大きく変わるだろう。
体格20の盗賊になれば大概的のアイテムを奪えるため、1ターンに1体は無力化できる。
もっと恐ろしいのがシーフの杖だ。
間違いなく歴代最強のアイテムだろう。
自分より魔力がしたの相手からアイテムが奪える。
魔力はせいすいやMアップの杖で上げることが出来る。
杖の使用回数は4回だがリペアの杖で4回治せる。
しかもマップ上どこでも奪える。
無敵としか言いようがない。
そして杖が凶悪だ。
行動不能になるスリープ、味方を襲うようになるバサーク、魔法を封じるサイレス、これらの射程範囲はマップ全体であるうえに自然に回復しない。
回復するにはレストの杖か他の毒などの状態以上で上書きされなければならない。
これを敵が連発してくるから恐ろしいのだが、先にこちらがシーフで盗む、サイレスをかける、ブリザー(攻撃が出来てかつスリープ状態にできる遠距離魔法)をあてるなどすれば何とかなるうえに、こちらが杖を奪えば相手にかけることが出来る。
敵軍の密集地帯にバサークをかければ同士討ちが始まって敵は半減するなど、敵の強さはそのまま敵に返って行く仕組みになっている。
一度不利になるとどこまでも不利になるのに、有利になるとどこまでも有利になるのがファイアーエムブレムらしい。
敵のボスの前にワープして倒し、もう一本のワープでリーフが玉座を制圧するなんてことも可能になる。
難易度はシリーズでも屈指の高さだけど、ある意味では聖魔よりも難易度が低いと言えると思う。
個人的にはチート的な解放がないヘクトルハードモードや特定キャラの生存やターン制限のある封印の剣ハード完全クリアの方が難しかった。
最も、事前情報が全くない状態だったらトラキア776はクリアできなかったんじゃないかと思う。
そんなんわかるか!が多すぎる
先ほどの杖や盗むの話もそうだが、そんな分かる訳ないだろ!というのが多い。
捕獲したままクリアしなければ仲間にならないとか、そういうキャラが非常に多い。
リフィスはたまたま仲間になったし、シヴァはキルソードがほしかったので開放したけど、一歩間違えば両方お陀仏だったかも知れない。
シヴァはまだいいけど、リフィスはいないと格段に厳しくなってくる。
というかむりげーだった。
後半、あんなに扉の鍵が必要だと誰が思うだろうか?
後半最大の敵は魔力の上がる床でもスリープでもバサークでもなく、鍵のかかった扉だった。
不注意でラーラがしんでしまい、パントも盗賊の鍵を使い果たし、扉の鍵はすでに一本もない状態で最終章を迎えた。
始まった瞬間絶望した。
扉の鍵を全部開けないとクリアできないからだ!!
言葉は悪いんだけど、バカじゃねぇかな?と本気で思う。
もしも扉の鍵が一本もなかったら完全詰みである。
救済措置が何もない恐ろしさ。
おかげで一個づつ移動して扉を開けるというとんでもない苦行が始まった。
当然のごとく仕様が全くわからないため、扉を開けた後は1人エース級のユニットを残しておいたのだが、これがかなり厳しかった。
増援として四隅に怒り持ちバーサーカー、ヘル持ちロプトマージ、銀の弓持ちスナイパー、あとなんかを持ったマーシナリーが延々沸く。
で、同時に台の上に載らないとならないらしく、乗った瞬間に回りを囲まれてしまった。
武器が完全に尽きてしまったというのもあり、ハルヴァン、シヴァ、ナンナ、アスベルが死んでしまった。シヴァはフェンリルを連続してくらったのだが。
ちなみにストーンはシーフで盗み、他のロプトマージはセティのブリザードで眠らせ、サイレスで封じ、バサークで混乱させ、杖は盗んでやった。
レスキュー24章外伝で使い果たしてしまったためなかったのがあだとなった。
24章外伝はさすがに難しかった。
私がやったファイアーエムブレムの中で最も難しいステージだった。
闇の中からスリープやらバサークやらが飛んでくるし、突然床の罠が発動して出口のない部屋に閉じ込められる。しかもその部屋からはスリープの剣持ちのマーシナリーと毒の弓を持ったスナイパーが出てくる上に、別の部屋からは毎ターンリワープとヨツムンガルドとヘルを装備したロプトマージが沸いてきて、マップの好きな場所に移動してくる。画面が真っ暗なのでこいつらがどこから来ているかすら途中までわからない始末。
毒状態でヘルをくらったらどんなキャラクターでも即死するうえに命中率は絶対に0にはならない始末。
このステージは正直もうやりたくない。1999年当時買っていたら間違いなく挫折したと思う。
もっとも、このステージも早々に敵のワープを奪って増援ポイントを押さえてさっさ大半のキャラが離脱して残りはどんどんリワープとワープ持ったキャラクターで離脱ポイントまで行けば良いのかも知れない。
他にも、ちょっと不注意でガルザスやトルードを仲間にし損ねたし(ガルザスは倒し、トルードは逃げた)、ゼーベイアは仲間にする気にもなれなかった。ちなみに、ゼーベイアのステージでマチュアとラーラがお亡くなりになってしまった。ラーラの死亡がのちにこんなに利くとは思いもしなかったよ。
それと、サイアスがすぐに離脱したのでブラギの剣も手に入らなかったし、オーシンで村を訪問するとプージが手に入ることもドラゴンランスを手に入れることもなかった。
全体を通じて言いたいことは、そんなんわかるか!!
ラスボス、なんでお前なんだ…
すでにラスボスの名前を忘れてしまった。
トラキアは聖戦のサイドストーリーだし、大物がラスボスにはなれないのかも知れないけれど、聖戦ではマンフロイすらラスボスの一歩手前の敵扱いなのに、その部下がラスボスって…
しかもリーフとの関係がそんなにないしな。
まだレイドリックラスボスの方が祖父の敵だしよかったんじゃないかと思う。
歴代ラスボスのお約束通り攻撃力半減だったし、かなり強かった(ブラギの剣がなかったからだけど)。
縁もゆかりもない小物がラスボスで、しかも弱い上に武器も普通って…
まだ増援で出てきたバーサーカー達の方が強かったよ。
なんだかんだ言って、ファイアーエムブレムの歴代ラスボスには格のようなものが存在していたと思う。
メディウスはマルスの家族やアカネイアはもとい、人類VS竜族という構図があったし、ユリウスはセリスの兄弟で、強力な力を持っていた。
でも、シリーズ屈指の難易度を誇るこのゲームのラスボスが…
トラキア776最大の謎 フェルグス
手に入れたことがないので知らなかったのだけれども、フェルグスはブラギの剣を装備できるらしい。
ブラギの剣はリーフ、ナンナ、デルムッド、フェルグスの4人が装備できるそうな。
って、フェルグスが装備できるのも謎だけどそれ以上になんでマリータとガルザスが装備できひんねん!!
ブラギの剣って聖戦士の血がないと装備が出来ないはずなのに、なんでなんやろう?
そもそもブラギってバルキリーの杖を継承しているはずなのにブラギの剣って何なんだ?
ロプトの剣も何なんだって感じだけれども。
フェルグスはともかく、実はマリータやガルザスも謎なんだよな。
てっきり聖痕は一世代に1人だけがでるものだと思っていたけれど、そうでもないらしい。
アグストリアでは最後に生まれた姫かなんかに聖痕が出たらしいし、生まれた子の誰にも聖痕が出ないパターンもあったりしたはずなんだよな。
必ずしも最初に生まれた人間に出る訳じゃないし、それこそロプトゥスなんて無理やり血を濃くして聖痕を出した感じがある。
アイラとホリンが結ばれるとスカサハやラクチェのオードの血が濃くなっているようだし、必ずしも直系の子孫でなくても聖痕は出るのかも知れない。
例えばエスリンとオイフェに子供がいたらバルムングを装備できるようになるかもだし。
そもそも、よく直系が今まで絶えなかったよなと思うよ。
聖戦だとネールの聖痕もちは1人もいなくなってしまったけど。
話はどんどんそれるけど、実はセリスとユリアの間に子供が出来たらロプトゥスの復活の可能性があるんだよな。
2部当初は二人に恋愛関係が芽生えるような危ない描写もあったけれど、ロプトウスを倒した2人が同時にロプトウスの血を引いているという点はやはり聖戦の系譜がただのゲームではないことを感じさせる。
紋章の謎もリメイクされたし、聖戦もリメイクされるのだろうか?
聖戦のリメイクは難しそうだな。
いきなりサイアスが仲間になってファラフレイムを引き継ぐとかアリオーンが仲間になるとかやられても微妙だしな。
で、フェルグスの話だけど、ブラギの剣が装備できる一方ベオの剣も装備できる。
そもそも待てよ、ベオの剣ってなんだよと。
ベオの剣のベオはきっとベオウルフのことだよな。
フェルグス以前にどうしてデルムッドが装備できるんだ? そしてなぜ持っているんだ?
考えられる可能性は2つ。
1つはデルムッドがベオウルフのもとで修業をしていた。
エルトシャンとの友情を感じているベオウルフ(戦闘しても両者の間に会話はないのだが…)は妹のラケシスを気にかけていて、その息子に剣の手ほどきをした。
もう1つはデルムッドとナンナがベオウルフの子供である可能性。
ちなみに私は聖戦の系譜ではデルムットとナンナの父親はベオウルフにしている。
この場合本当はナンナはフィンの子供ではないことになる。
これは可能性として大いにある話で、デルムッドはバーハラの悲劇前にセリスたちとともにイザーグへ行ったけれど、ナンナはバーハラの悲劇時に妊娠していたラケシスが後に生んだとすれば時系列的にはおかしくなくなる。
ベオウルフの生死は謎だが、フィンとラケシスがその後結ばれてもおかしくはない。その場合フィンがナンナを娘だと言っているのも
ベオの剣はオイフェか誰かがデルムッドに持たせたのかも知れない。
さて、問題なのはフェルグスだ。
フェルグスの名前はケルト神話における「アルスター物語群」に出てくるフェルグス・マック・ロイから名前を付けたものと思われる。
バルムングやミストルティン、フェンリルなんかは北欧神話、アーサーなんかはケルト人の物語であるアーサー王伝説のアーサー・ペントラゴンからだろうからフェルグスもそうなんだろうと思う。
ちなみにそのフェルグスの持っていた剣はかの有名なカラドボルグで、コノートに亡命していたフェルグスはカラドボルグを奪われてしまうそうな。
カラドボルグはサガシリーズのモンスターなんかとしても有名だけれども、実はエクスカリバーのことではないかという説もあるらしい、
エクスカリバーはファイアーエムブレムではなぜか風の魔法だけども。
で、このフェルグスがベオの剣を装備できるということは、やはりベオウルフの子供なんだろうな。
母親はエンディングにも出てきたコノートの王女なんだろう。
リノアンがヘイムの血族であったように、コノートの王女も何かしらの血族なのかも知れない。
ベオウルフは聖戦では珍しく聖戦士の血を引いていないし、そもそも血族は結構いろいろなところにいるみたいだし違和感はない。
封印のアストールさんみたいにベオウルフ自体も子供の存在を知らなかった可能性もあるな。
でも、いずれにしてもフェルグスの生い立ちは悲しいものになってしまう。
陽気な奴ほど実は悲しい過去があるのは我々の生きている社会でもよくあることだし、世界ヒロシな訳だし。。