医師が語る!要注意?短期間のダイエットで生じる困ること

ダイエットで体重を減らすことは、健康を増進し寿命さえ延ばすと言われています。ですから、そこまで太っていなくても、健康のためにダイエットしようと考える人も多いのではないでしょうか。しかし、太っていなくても健康のためにダイエットしようとする人には、ダイエットをすることへの切迫感はあまりないかも知れません。その一方で、太った体をなんとかしなきゃと悩んでいる人にとっては、ダイエットをすることは切実な問題です。そんな人がダイエットをして、体重を1日でも早く減らしたいと願うのは当然のことでしょう。

実は、手っ取り早くやせる方法があります。それは完全な絶食に近い水ダイエット(water fasting)です。実際に学術誌に掲載されている実例として、1日あたり約750g(10日で7.5Kg!)の体重減少が観察されたというコロンビア大学(米国)の報告や、50日間で21.4Kgも減量したウエストミンスター大学(イギリス)の実験があります。これはすごいダイエットですね!

ところがどっこい、現実はそう甘くはありません。どちらの実験でも口にすることができたのは、カロリーのない水分のみ(お茶やコーヒーか水)とマルチビタミンやミネラルのサプリメントのみでした。これらの実験での絶食期間は10〜50日間という短期間でしたが、10日間であっても絶食することは普通の忍耐力ではできないことでしょう。また、これらの実験参加者は、入院環境下で厳密に健康管理されていました。絶食によるダイエットは、実験参加者を入院させてまで健康管理を行う必要があり、そして実際、ウエストミンスター大学の実験では、血液検査での異常や身体的変調が生じていますから、相当危険なダイエット法と言えるかも知れません。

しかし、短期間でヤセられるというのはやはり魅力的です。と言っても、自分ひとりで行うのは危険すぎます。では、完全な絶食ではなく多少のカロリーを摂取する方法なら、リスクを負うことなくダイエットできるのでしょうか?ここでは、短期間で十分に体重を減らすダイエットのメリットやデメリット、できる限り早く体重を減らすダイエットで注意すべきポイントなどについて解説します。多少、理解しにくい内容もありますが、分かりやすく解説しているので読み進めてくださいね。

短期間のダイエットとは?そのメリットとデメリット

短期間とはどれくらいの期間なの?

短期間のダイエットのメリットに言及する前に、1つ疑問が湧いてきます。短期間とはどれくらいの期間を指すのでしょうか。短期間(short term)と長期間(long term)をキーワードとして学術論文検索をしてみると、各論文が短期間としている期間は10数時間〜6ヶ月、長期間は数年(6年程度)以上としているようです。ここでは、短期間を6ヶ月以内として検討していくことにします。なお、超短期間(数週間以内)でのダイエットは、非常に厳しいカロリー制限が条件となるため、絶食(水ダイエット)をモデルにして書き進めます。また、6ヶ月以内を短期とした場合は、固形物(食事)も食べられるダイエットが前提であり、超短期間と短期間ではダイエット法が異なるので注意してください。

超短期間で急激にダイエットすることのメリット・デメリットは?


ダイエットを超短期間で成功させることで生じるメリットの殆どは、心理的な効果であると言っていいようです。East London and City Foundation NHS Trust(イギリスの公的保健サービス)などが行った18時間という超短期間の絶食(水以外は口にできない)では、デメリットとして空腹感やイライラが強くなり、絶食を続けることが困難であると感じる程度が大きくなりました。その一方で、メリットとして、達成感や自分を誇らしく思う感覚、自分をコントロールできたという感覚が有意に高まりました。そして空腹感をより強く感じた人は、絶食体験から何かが得られたという感覚がより大きかったようです。

超短期間のダイエットで得られる身体的なメリットは微妙です。急激なダイエットはデメリットも多いようなのです。まずメリットの筆頭は、体重の減少が非常に短期間で達成できることがあげられます。先に述べたように、コロンビア大学の研究では、1日あたりの体重減少量は約750gでした。これは1ヶ月に換算すると22.5Kgほどの減量に相当します。体重を減らすというダイエットの目標からすれば、絶食などの激しいカロリー制限は華々しい成果をもたらすことになります。これに関連して先にあげたウエストミンスター大学のデータでは、体脂肪は約20%減少し、特に手足の脂肪の減少は大きなものでした。ところが、腹部の皮下脂肪の減少はあまり認められず、胸と肩の盛り上がりは無くなってしまいました。要するに、急激にダイエットしてもお腹まわりの脂肪は減らず、胸や肩の筋肉が減って不恰好な体型になってしまったのです。さらに、血糖やコレステロール、尿酸の血中濃度が低下したものの、正常範囲を超えた低下であり健全な状態とは言えないものでした。これは超短期といっても、50日間も絶食を続けた結果ですから、普通はこのようなダイエットを行うことはないでしょう。とはいえ、超短期のダイエットをする価値があるかどうかを考えてしまう結果ですね。

6ヶ月以内に目標達成するダイエットで生じるメリット・デメリットは?

短期ということを6ヶ月以内という範囲まで広げると、メリットがデメリットを凌ぐようになるようです。と言っても先に述べた絶食のようなダイエットを6ヶ月続けるということではありません。激しいダイエットを象徴する研究には、あの有名なミネソタ飢餓実験があります。この実験は完全な絶食ではありませんでしたが、24週間(約6ヶ月)で体重を約24%減らすような厳しいカロリー制限が行われました。例えば、80Kgの人がほぼ半年で60Kgまで減量するという厳しいものです。この結果、体温や心拍数が低下し、手足の浮腫・血中のタンパク低下などの異常が観察されました。さらに、うつ状態・体のことを異常に心配する心気症という状態・性交渉の低下・引きこもり傾向の増加・孤立傾向・集中力や判断力の低下などの心理的行動的な異常も出現したようです。ミネソタ飢餓実験レベルの激しいカロリー制限はしない方がいいでしょう。

では、もう少しカロリー制限の程度を抑えたダイエットの場合はどうでしょうか?ここで、ペニントン生物医学研究センター(米国)の研究報告を見てみることにしましょう。この研究でのカロリー制限の設定は、体重維持のために必要なカロリーから25%ほどカロリーを減らすダイエットです。カロリー制限をした期間はミネソタ飢餓実験と同じ24週間であり、体重の減少は元の体重の10%以内でした。ミネソタ飢餓実験の半分以下(約42%)のカロリー制限になりますね。このセンターの研究結果は次のようなものでした。

まず心理的および行動面での変化として、食べたいという願望は増加し、食欲を満たしたことへの満足感は低下しました。その一方で、摂食障害に関連するような要素(ドカ食いなど)は増えず、摂食障害でよく見られる太ることへの恐怖感や下剤の使用も悪化が認められませんでした。また、うつ症状の検査でも変化はなく、一部の検査ではうつ状態の程度が改善さえしました。主観的な活力感には変化がなかったものの、身体的な機能の良し悪しについての主観的感覚は向上し、さらに、認知機能への悪影響も認められないという結果でした。

また、身体的な影響については、体重が平均で8Kg以上減り、脂肪は約24%低下し内臓脂肪と皮下脂肪の合計は27%ほど減少しました。そして、筋肉など脂肪以外の成分は約4%少なくなったものの、10年後に心血管疾患になるリスク(血中の中性脂肪の減少や善玉コレステロールの増加などから見積もる)が約28%低下するというような変化も認められました。

これらの結果に加えて、1日の安静時代謝量(安静にしている時のカロリー消費量)と睡眠中のエネルギー消費の低下が観察され、その低下割合は、エネルギーを消費する筋肉や脂肪の減少量から計算される値を上回るものでした。エネルギー消費の低下により活性酸素の発生が少なくなって、酸化ダメージ(DNAダメージ)を低めて寿命に好影響を及ぼす可能性があると著者らは考察しています。なんだか短期間の適度なダイエットは、いいことばかりのようですね。

短期間のダイエットをする上での注意点

以上で述べたように、適度なスピードでの短期間のダイエットには、心身ともに殆どデメリットはないようです。しかし、本当に短期間のダイエットで注意すべきことはないのでしょうか。この項では、短期間でのダイエットにおける注意点に切り込みます。

短期間で体重を大きく減らすと脂肪が減らない?

ダイエットしたとき、脂肪と同時に筋肉まで減ってしまうことが分かっています。そして、ロチェスター大学(米国)の研究では、ダイエットで減った体重が大きほど、減った体重に占める筋肉の割合が大きくなることも示されているのです。しかも、ダイエットに挫折して体重がリバウンドするときには、体重の増加は優先的に脂肪の増加に割り振られ、その影響は筋肉の多い人ほど大きいことも分かっています(ジュネーブ大学[スイス])。つまり極端な言い方をするなら「ダイエットして筋肉が減って、リバウンドして脂肪だけが増える」という悪循環が生じるということです。言い方を変えると、ダイエット前と同じ体重に戻ってしまうと、体重は同じでも脂肪の量はダイエット前よりも増えてしまい、反面、筋肉は減って、ますますヤセにくい体になってしまうということです。要するに、短期間のダイエットで注意しなければならないポイントは、筋肉が減ることだと言っていいでしょう。

筋肉の減少を少なくして脂肪を多く減らす方法はあるの?


この筋肉を減らさずにダイエットする方法はあるのでしょうか。その答えのヒントとなる研究があります。その1つ、ウエストバージニア大学の研究では、1日あたり摂取カロリーを800Kcalとし、それを12週間継続しています。それほど激しいカロリー制限を課した場合であっても、筋トレ(抵抗運動)を併用すると筋肉がほとんど減らなかったというのです。一方、筋トレではなく有酸素運動をカロリー制限と併用した人は、体重の減少量は大きかったものの、筋肉が有意に減ってしまいました。ダイエットする時には筋トレを一緒に行え!ということですね。

次に、筋肉を減らさない栄養摂取法に関して分かりやすいのが、イリノイ大学(米国)の報告でしょう。その研究によれば、カロリー制限の程度は同じであっても、タンパク質と炭水化物の摂取比率を1:3.5(1日のタンパク質摂取量68g)と1:1.4(同125g)で比較した場合、タンパク質の摂取量が多い人は、筋肉の減少割合が有意に少なかったというのです。しかも、食事への満足度が高かったとしています。高タンパク食は、筋肉の減り具合が少なく、空腹感も少ないということでしょう。

以上の研究から、筋肉を減らさずにダイエットするには、筋トレを併用することと摂取するタンパク質の量を増やすことがポイントと言えます。哺乳類の場合、食肉(主に筋肉)のタンパク質含有量は20%程度とされています。上記のイリノイ大学の報告に従えば、1日に食肉を600g以上も食べるということになります。しかし、これは日本人の場合はとても食べられる量ではないかもしれません。それでもダイエットする時には、できるだけタンパク質を多く取るよう意識すべきでしょう。なお、筋トレをする時には、何回もできるような筋肉運動を長時間行うよりも、連続しては10回程度するのが限界であるような筋肉運動を、休憩を入れて数セットするのが良いようです。

短期間のダイエットはどれくらいの減量スピードがいいの?

推奨される減量スピードは1週間で0.5Kg?

オークランド工科大学(ニュージーランド)のE.R.Helmsによれば、体脂肪率13%で70Kgのボディービルダーがコンテスト出場準備のために減量するとき、望ましい体脂肪率になるためには、70Kgの体重からさらに6〜7Kg減量しなければならないとしています。そして、この減量は、伝統的にコンテストの3ヶ月前から始められるようです。これは、1週間あたり0.5Kgの減量であれば、筋肉をほとんど減らさずに体重を落とすことができるとされているからです。これ以上のスピードで減量すると、筋肉が減ってしまうリスクがより大きくなるのです。

また、アスリートを対象とした研究(ノルウェースポーツ科学大学)ですが、同じくらい体重を減らす(約4Kg)ために、1週間あたり体重を0.7%ずつ減量して平均8.5週間かけてダイエットした場合、脂肪が約31%減り筋肉は2.1%ほど増えました。一方、1週間あたりの体重減少を1.4%として平均5.3週間かけるスピードでダイエットすると、脂肪の減少は21%程度であり筋肉はおよそ0.2%減少したという結果が得られています。この結果を言い換えると、8.5週間で約4Kgすなわち1週間あたりおよそ0.5Kgの割合で体重を減量すると、1週間あたり0.75Kg程度(5.3週間で約4Kg)のスピードで体重を減らすのに比べて、脂肪の減る量も多く筋肉も保てるということですね。なお、研究対象の全例に筋トレ(抵抗運動)が行われており、単にカロリー制限だけが負荷されたのではないことに注意してください。

以上から、ボディービルダーやアスリートでなくても、ダイエットで体重を減量するスピードは1週間で0.5Kg程度にして、運動、特に筋トレを併用するのがいいと言えるのではないでしょうか。

太った人は減量をスピードアップできる?


ダイエットにおける筋肉の減り方について、また別の要素があることが分かっています。先に述べたロチェスター大学の報告によれば、減った分の体重に占める筋肉の割合は、3つの要素により影響されるとしているのです。3つの要素とは、1つはダイエット前の体重に占める脂肪の割合であり、1つは体重を減らすスピード、そして、もう1つは運動という要素です。どのように影響が出るかというと、ダイエット前に脂肪の割合が少ない(筋肉が多い)人・ダイエットでの体重減少のスピードがはやい場合・運動をしないとき、これら3つのいずれでも筋肉が減る割合が多くなるというのです。ですから、脂肪の多い人は、ダイエットをかなりスピードアップしても、筋肉の多い人に比べて脂肪をより多く減らすことができます。けれども、筋肉の多い人はより慎重にユックリと、しかも相当量の運動を併用してダイエットしなければ、筋肉が多く減ってしまうのです。ダイエット前にどれくらい太っているかによって、ダイエットで体重を減らすスピードを調整しなければならないということですから、正しくダイエットすることは本当にややこしいものですね。

おわりに

今回は、ダイエットにより体重を短期間で減らすことのメリット・デメリット、体重を減らすスピード、短期間でダイエットをするときの注意点や対処法について解説しました。

確かに、ダイエットを短期間で成功させることができれば、達成感もあり誰もがそうしたいと考えるのが普通でしょう。しかし、あまりに急激な体重減少は、ここで述べたようにデメリットも多いのです。ここでは短期間で体重を減らすダイエットのデメリットとして、主に筋肉が減る問題について取り上げました。一般に、ダイエットで減らしたいのは脂肪でしょう。ところが、急激に体重を減らすと、「筋肉が減る」割合が増えてしまうのです。

ところで、動いていないときでも体はカロリーを消費します。この安静時に消費するカロリーは筋肉の方が脂肪組織よりも多いので、筋肉が多く減ると体が消費するカロリーが少なくなってしまいます。これに加えて活動時の消費カロリーもより減ります。さらに、ここでは述べませんでしたが、ダイエットでカロリー制限をするとエネルギー消費が省エネモード(代謝適応)になって、体重の減少から予測される以上に消費カロリーが減ってしまいます。これらの要因の積み重なりによって、減った体重を増えないように保つには、減量前に摂取していたカロリーに比べて、より少ないカロリーしか摂取できないことになるのです。つまり、より少ない量しか食べられないということであり、同じ量を食べても「太りやすくなる」ということです。ですから体重が減ったからと言って、ダイエットしはじめる前と同じ量を食べていてはアッという間に元の体重に戻ってしまうのです。

また、食事の量を減らす程度が大きくなると、腹ぺこ度が高くなりますね。持続する空腹感が酷くなれば、体重を維持する以上の量を食べてしまう可能性が高まります。要するに、食べる量が増えてしまうリスクが高くなるのです。そして、食べれば太ります。その結果、先に述べた内容も合わせて考察すると「ダイエットする→体重が減る→筋肉が減る→消費カロリーは減る→太りやすくなる→リバウンドする→体重が戻る→筋肉より脂肪が増える→ダイエットし難くなる→ダイエットする→・・・」を繰り返して、体重に占める筋肉の割合がどんどん減って脂肪の割合が増加します。体重は変わっていないのに、脂肪だけは増えている状態になります。よりヤセにくい体質になって、次にダイエットするときには、その前のダイエットの時よりも、もっとカロリー制限を厳しくしないと、前回のダイエット時と同じようにはヤセなくなるのです。厳しいダイエットは空腹感も強くなり、リバウンドする可能性を高めてしまいます。要するにどんどんヤセにくい体質になり、リバウンドもしやすくなってしまうのです。リバウンドして元の体重以上に体重が増えてしまう(オーバーシュート overshoot)ことにもなりかねません。最悪の場合、太った状態になったままダイエットを止めてしまうことになってしまいます。

結局、同じ分だけ体重を減らすにしても、急激に減らすよりはユックリと減らす方がメリットは多いのです。しかし、1年で1Kgなどというようなユックリし過ぎたスピードでは達成感もなく、却ってダイエットは続かないでしょう。本文で述べたように1週間あたり0.5Kgの体重減少を上限として、負担感や苦痛感があまりなく、かつ達成感を持てるスピードでダイエットするのがいいでしょう。まず最初は、できるたけユックリとしたスピードでダイエットをはじめ、1ヶ月ほど行っても達成感を感じられないのであれば、ダイエットのスピードを少しあげていき、達成感が感じられる最低のスピードで固定するのがよいかも知れません。このようにして、自分に合うダイエットのスピードを見つけ出せれば、きっとダイエットが成功した状態を保てるのではないでしょうか。ただし、くれぐれも筋トレをお忘れなく!

筆者紹介:米澤利幸
島根医科大学(現島根大学医学部)卒業
福岡大学大学院修了(医学博士)
日本精神神経学会認定専門医
赤坂心療クリニック院長

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